梅雨入りし、夏に向かって気温もだんだん上がってきました。
図書館では時折入ってくる風が気持ちいいです。
5月の読書会、課題本は『ピース・ヴィレッジ』(岩瀬成子著 偕成社)でした。
今回は課題本に加えて、作品の背景や作者についても掘り下げてみようということで
参加者の方が調べてきてくれました。
物語は山口県岩国市の基地がある町が舞台。
小学生の楓ちゃんが見た、町の日常と周りの人の人間模様が描かれた作品です。
みなさんの感想を紹介します。
Oさん:岩瀬成子のデビュー作『朝はだんだんみえてくる』(1977年 理論社)を読みなおした。
主人公の奈々は中三なのにもうタバコ、ビール、ジャズ喫茶にも行く。
今そういう若者は珍しくないかもしれないけど、
当時この作品を読んだときは「本当にこんな子いるの?」と思った。
奈々が入り浸っていた反戦喫茶は実在していて、喫茶店に武器・弾薬を隠し持っていると言われたり、
裁判を起こされたこともある場所。
岩瀬成子や奈々ちゃんという人も実際に出入りしていて
『ほびっと 戦争をとめた喫茶店』(中川六平著 講談社 2009)という本の中に出てくる。
ピース・ヴィレッジは本当にあるかわからないけど、喫茶店ほびっとが継続していたら
こんな風になっているのかな。
それとも、実際には新しくそういう場所ができているかもしれない。
特殊な状況で暮らす人がたんたんと書かれていて、穏やかに物語が流れる。
岩瀬さんは岩国市育ちで今も在住。今年沖縄が返還されて40年。
基地があるところで生活する子どもたちはもっと大変だけど、子どもからの視点から書かれた本がない。
それは原発ともつながることだと思う。そういう意味で問題提起のある作品。
Mさん:仕事で沖縄に3~4回行ったことがあり、基地の多さに驚いた。
普天間の基地は、一般人が所有している土地を政府が借りて、それをアメリカに貸している。
読みながら沖縄を思い出した作品だった。
この作品は色んな立場の人を許容しながら書いていると思った。
誰かのあとについて真似することしかできなかった楓ちゃんが、
自分のしたいことを自分でやってみようとする成長の場面が好き。
Nさん:今の生活と舞台がかけ離れていて、内容が難しくて作品に入りづらかった。
基地のことをニュースで見ても関心を持てなくて人ごとと捉えてしまう。
自分で勉強しないと入っていけないのかなと思った。
この人たちにとっての問題と自分にとっての問題が違うと感じた。
Dさん:私も『朝はだんだん見えてくる』を読みなおした。
ジャズの音やオートバイの音、ワルツを踊る場面もあって、音がいっぱい出てくる作品。
基地がにぎやかな時代だから。大人に反発する元気のいい作品。
それに対して『ビース・ヴィレッジ』は基地がさびれている今が描かれていて
とても静かな印象を受けた。
作者は女の子が主人公の作品をよく書いている。
周りの人を見ながら自分でも体感しながら成長していく。
作者が自分の子どもの頃を大切に見直してた人なのかもしれないなと思った。
Kさん:私も『ピース・ヴィレッジ』と『朝はだんだん見えてくる』を読んで、
作品を読みながら沖縄のことを思った。
米兵と沖縄の人が結婚して生まれた子どももまた差別されるというのを聞いたことがある。
難しい問題だけど、基地も原発もいらないと言える立場でいたい。
『朝はだんだん見えてくる』は時代背景がよくわかる。
バミューダ・パンツやパンタロンなど、今は使わない言葉が出てきて面白かった。
場面が映画のシーンのように浮かんでくる描写だった。
『ピース・ヴィレッジ』は楓ちゃんが大人っぽいなと感じた。
小学生なのに周りを客観的にみていて、これはあまりにも大人びて書かれていると思った。
などなど、読書会初参加の方もいて、今回は楽しく真面目に盛り上がった読書会でした。
『ピース・ヴィレッジ』、『朝はだんだん見えてくる』ともぜひ読んでみてください。
次回読書会は
6月30日(土)14:00~
『ウィロビー・チェースのおおかみ』ジョーン・エイキン作 冨山房
です。どうぞお楽しみに。